初転倒。
「二輪ライダーたるもの、いずれ1度は転倒を経験するもの。」
と認識はしていたものの、こんなに早く"その時"が来るなんて思ってもいなかった…。
以下、回想。
帰宅後夜11時手前、ちょっと涼みに行こうと思い、カブ50に跨る。
交通量も少なく、涼しげな近場の峠を目指して走り出す。
当然だが、山に入るにつれて起伏が激しくカーブも多くなる。
いつものツーリングコースでは面白みに欠けると思い、いつもは通らない道へ曲がる。
制限速度表示が上がり、道幅も広くなったため、少しずつスピードが上がる。
長い下り坂を経て、更に傾斜がきつい下り坂に差し掛かる。
「ちょっと速いな。危ないかも。」
そう思いブレーキング動作を開始すると同時に、目の前の闇にカーブが見えた。
「ヤバい!速い。このままじゃ曲がりきれない。」
道幅をいっぱいに使いフルバンクさせて曲がりきるしか無い。
しかし、道路脇の縁石からは草が生い茂っていて道幅をいっぱい使うことは不可能だった。
目の前には、縁石。その向こうには柵、柵を越えると崖。
「もうダメだ。」そう思った瞬間、とっさにフロントブレーキを全力で握っていた。
切迫しすぎた状況下で、バンクさせていることなど頭の中からは消えていた。
フロントタイヤがロックし始める。
「ヤバい」と思う。
3秒耐えたが、立て直せるわけもなくアスファルトに叩き付けられる。
「遂にやってしまった。」と思う。
気付くと身体がアスファルトを滑走している。
「止まらない。」
「バイクが無い。」
すべりながら思った。
しばらく地面を滑走した後、身体が止まる。
後を追ってバイクが突っ込んできて、やがてエンジンが停止した。
「痛てて…。」
アゴを触ったグローブが濡れて月明かりに照らされて光っている。
「これ、やばいかもしれない。でも、四肢は動くし、頭部、頚部へのダメージは無いみたいだ。」
「早くバイクを起こさなきゃ」
と思い立ち上がろうとするも、両脚に力が入らず、立ち上がれない。
どうにもできずに、しばらく路面に横たえていると通りすがりのオジサンライダーに助けられ、バイクを起こしてくれた。
ウインカーランプ、ミラーが大破。ブレーキレバーが曲がっている車両を見て、事の重大さにリアリティーが増した。
外見上深刻なダメージを受けているカブであったが、流石はカブである。
エンジンがかかるではないか。
家までそんなに離れていなかった事と、初めての単独事故で動揺していたこともあり、「救急車呼ぶかい?」というおじさんの提案を断り、感謝を告げて、
自走して帰るという無謀な行為に出たのだった。
今思えば、救急車を呼ぶべきだった。
自宅に帰ると、普段着の上に羽織っていた厚手のウインドブレーカーの上下に穴が開いてボロボロになっている。
顔はアゴからの出血で血まみれ。
両四肢も厚着をしていたのに血だらけ。
とりあえず、夜も遅かったので、傷の手当をして眠りについたのでした。
翌日、車(二輪は怪我で乗れないので四輪)で事故現場に行ってみると、10メートル程度の摩擦痕があり、オレンジ色のウインカーレンズが散乱していた。
何度も何度も冷静に事故を頭の中で再現していて気付いたのが、
「正しく急制動の措置を取っていれば、事故は起きなかったのではないか」という事。
これが、教習所に行こうと悩んでいた僕の背を押して、入校手続きをさせた最大の動機である…。
※もちろん、怪我が治るまで通い始められなかったんだけどね。。。(笑)